エールリヒ - コーヒーブレイク - 【ニーズを形にする】開発型ベンチャー企業 エイブル株式会社 株式会社バイオット

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第60回 エールリヒ

エールリヒ (1854~1915)

18世紀後半に登場した合成染料のなかには、動物の細胞の特定の部分だけを染める性質を持っているものがある。繊維を染めるという本来の目的とは違うその点に、大いに興味を持ったのが、エールリヒであった。彼はこれにヒントを得て、化学物質を用いて直接病原菌を退治するという新しい療法を考え出した。
 1901年、ドイツの実験治療研究所長だった彼は、ある日、主に家畜の病気の原因となるトリパノゾーマという病原虫を完全に殺すのにはヒ素注射がいくらか有効だという論文を読んだ。そこで彼はこの病原虫を確実に殺す化学薬品を作ろうと、900ものヒ素化合物を作ってみた。しかしその努力にもかかわらず特効薬はとうとう見つからなかった。
 その4年後、梅毒の病原体、スピロヘータ・パリダが発見される。「トリパノゾーマと似ていないこともない」と書かれた論文を読んだエールリヒは、スピロヘータを注射した鶏に、606番目に開発された試薬を与えた。その結果、鶏は元気なまま、病原体だけが退治された。安全性の確認の後で、この試薬は瀕死の梅毒患者に用いられ、めざましい効果をあげた。
 エールリヒは、本来の目的であった病原虫の特効薬は作れなかった。しかし結果的には、もっと人間を苦しめてきた梅毒の治療薬を作ることに成功した。彼が合成染料の、本来とは違う用途に目をつけたのとなんとなく似ていないではないだろうか。