中谷宇吉郎 - コーヒーブレイク - 【ニーズを形にする】開発型ベンチャー企業 エイブル株式会社 株式会社バイオット

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第59回 中谷宇吉郎

中谷宇吉郎 (1900~1962)

雪は古来より美しいもののひとつとして、月や花と並び称されてきたが、雪の多い地方にとっては害をもたらす恐ろしい自然現象でもあった。石川県の豪雪地帯に生まれた中谷宇吉郎は、放電とX線に関する研究を行う科学者であったが、北海道大学の助教授時代に雪の結晶写真に出会い、以後その人生を雪と氷の研究に捧げた。
 当初、中谷は野外で雪の観察を行っていたが、健康上の理由から断念し、室内での人工雪の研究に移行した。中谷が研究を始めたころの人工雪は、結晶の形からすると「霜」といった方が適切だった。雪を作るには二つの条件がある。水蒸気を空中で凍らせなくてはならないことと、空中の水蒸気が凝固するための「芯」が必要なことである。しかしこの頃の人口雪は、水蒸気を冷却板の上で凍らせて作っていたため、「雪」になりえなかった。中谷は低温の実験室を作り、最適な「芯」探しを行ってようやく実験を成功させた。その後の研究により、気温や水蒸気の条件に応じて結晶の形が規則的に変化することを発見した。この実験を逆にたどると、点から降ってくる雪の結晶の形から、上空の気温や湿り具合が推定できる。このことを中谷は、「雪は天から送られた手紙である」と詩的に言い表している。
 美しいと同時に畏怖の対象である雪に、中谷は「詩人の心」をもってその正体を見極めようとしたのである。